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2007/01/28

ボッティチェリの絵画

昨日、テレビ東京系列の番組「美の巨人たち」でルネサンスの画家のボッティチェリが取り上げられていました。ボッティチェリは、イタリアのフィレンツエで活躍した画家です。
その番組は、途中からちょっと見ただけでしたが、私は彼の絵がとても好きです。

2年ほど前、神戸で開催されていた「ベルリンの至宝展」で、ボッティチェリの描いたヴィーナスの絵を見ました。有名な「ヴィーナスの誕生」の、ヴィーナスの部分だけを取り出したような絵で、髪型や表情が少し違うだけでよく似ていました。
その時、風韻誌に書いた感想を紹介させていただきます。

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ボッティチェリの絵画は、ルネサンスの芸術家達に大きな影響を与えた、新プラトン主義の思想(ギリシャ哲学とキリスト教が融合した思想)を表現していると言われています。
中世のキリスト教が、大衆の心の支えになったと同時に、一方では人間本来の命の伸びやかさ・自由さを抑圧してきたという側面は否定できないと思います。
新プラトン主義は、人間は罪深いものという中世の考えに対して、人は愛を仲立として神との交流を目指すものであると、人間賛歌を高らかに歌い上げたのです。

ヴィーナスは、新プラトン主義では魂のイメージで、神の美と愛を表すとされたそうです。中世のキリスト教の考えでは、肉体は悪しきものとされていましたから、裸の女性を描くことは考えられないことでしたが、ボッティチェリは、人間の肉体に現われている神の命の美しさを気高い精神性をもって見事に描きました。

しかし、サボナローラという修道僧の教えの影響を受けてから、ボッティチェリの絵は彼本来の瑞々しい美しさを失ってしまいます。サボナローラは、フィレンツエの人々に、「悔い改めよ、贅沢や享楽は魂を滅ぼすだけだ。初期キリスト教会の単純さのみが人々を救う」といった説法を行い、神権政治を始めた人です。サボナローラにとって、裸体画や異教の神を描いたルネサンス芸術は許せるものではなく、多くの絵画や彫刻を集めて焼却してしまいます。

まさにサボナローラが非難するような絵を描いていたボッティチェリの心は激しく動揺します。自分の描いてきた絵が、神の御心に反する罪深いものだったかもしれない、という恐れを感じたのでしょうか。ボッティチェリは自分の意志で、彼の絵を焔の中に捧げたと言われています。後にサボナローラが異端の罪で処刑されても、ボッティチェリは彼への信仰を失わず、彼が説いた厳格で禁欲的な宗教生活を続けました。彼の絵は徐々に瑞々しさのない硬いものに変わってゆき、ついには絵筆を折ってしまいます。晩年は不遇な生活を送り、65歳で亡くなりました。

私は、ボッティチェリの人生に思いを馳せる時、彼は自分の作品の素晴らしさを理解していなかったのだなぁと思わずにはいられません。本当に作品の良さを深く理解していれば、自分が描いてきた絵を否定するようなことは決してなかったでしょう。

ルネサンスの芸術家は、過去世、古代ギリシア・ローマ時代の画家や彫刻家だった人が多いと父から聞きましたが、ボッティチェリもそうだったのでしょう。彼は天より流れてくる神様の響きを、絵筆を通してスッと通しやすい体質で、その訓練というか修行も過去世相当やってこられたのだと思います。ただそのことを、肉体のボッティチェリ自身が自覚していなかったのでしょう。それでサボナローラとの縁もあり、彼の言うことに動揺してしまい、素晴らしい絵が描けなくなってしまったのだと思います。

私は、ボッティチェリは、晩年は確かに気の毒だったけれども、あの時代に与えられた天命を充分に完うしたのだと思っています。そして晩年の不遇を嘆くより、彼が『ヴィーナスの誕生』などの素晴らしい作品を創造した奇跡を称えたい気持ちがいたします。
人間賛歌こそ、彼の傑作と共に、永遠に残っていくボッティチェリの真実の精神なのですから・・・・・・。(略あり)

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コメント

 私もあのTV番組を見ました。昔から春の三女神の部分がきれいだなと思っていました。この人の絵は素晴らしいところがあり、しかし同時に何か気になるのです。それが何かわかりませんが。
 特に晩年のことを聞いてからは彼のことが気にかかっていました。だから晃久さんが彼はちゃんと天命をまっとうしたと書いてくださったのは、本当に嬉しくてほっとしました。
 あの世でも画家をやっているなら、彼の絵の美と輝きをもっと高めてほしいなんて思ってしまいます。

投稿: のんのん | 2007/01/28 21時48分

村田先生のボッティチェリ評が面白かったので、紹介してみました。

ゴッホをはじめ、芸術家は不遇な人生を送った人が多いですが、あまりそのことに把れると、その作品の本質がわからなくなると思います。

例えば、ミケランジェロの人生は、ボッティチェリ以上に苦しかったかもしれませんが、その苦しみの中から素晴らしい傑作を生み出しています。
父が、ミケランジェロが亡くなるまで彫っていたピエタ像は、実際に見てみて、すごい神様の救済の光が降りてきていた、と言っていました。
優れた作品を残してくれた芸術家達には、ただただ感謝あるのみです。

投稿: 晃久 | 2007/01/29 00時23分

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